アーモンドもなか

一般人の偏愛雑記です。ジャニオタでもあります。

知識がないので「音楽劇マリウス」を予習した

 

6/8、ついに明日から舞台「音楽劇マリウス」の幕が上がる。

ご存知の通り、2017年3月に日生劇場で公演が行われた今井翼主演の同作を、大阪・松竹座で桐山照史が翼くんの代役として主演を務める。こういった形で降板となってしまうのは残念だが、そうでなければ私がマリウスを観劇する機会も無かったので、この偶然のご縁を十分に楽しむべく、きちんと予習をしていこうと思う。

 原作について

原作はマルセル・パニョル、フランスの1900年代の国民的劇作家である。代表作は本国では誰もが知るというマルセイユ三部作(マリウス/ファニー/セザール)。音楽劇マリウスはこの三部作のうち「マリウス」「ファニー」をまとめたものだ。原作の三部作は人情喜劇であり、1930年代当時のフランスが実存主義社会であったという背景を踏まえると、人情の世界、人間の本質に焦点を当てた戯曲というのは珍しかったのではないかと思う。

フランス・マルセイユはフランス南部に位置する最大の港湾都市である。フランスの港町と聞くと、カモメが優雅に飛ぶ青い空と太陽がきらめく下でたくさんの荷物が行き来し、夜になれば各国の船乗りたちが船着場近くの大衆酒場で次の出航まで毎晩陽気に宴会している様子が浮かぶ。その場限りの男女の一期一会が繰り返されていたのだろう。マルセル・パニョルは港町の陽気さと活気を人情を織り交ぜながら表現し、マルセイユ三部作は当時から現代まで何度も芝居や映画など様々な形で上演される人気作となった。

 

「マルセイユ」の画像検索結果

マルセイユ。素敵すぎ・・・

 

「音楽劇マリウス」のあらすじ

あゝ、何故愛してしまったのか!

マルセーユ。太陽の国。あらゆる景色が大口をあけて笑っているような陽気なプロバンスの港町。そこで暮らす呑気な人々と、そこに生まれた若者の苦悩を描いたフランスの国民的喜劇の傑作。「寅さん」を世に贈った山田洋次監督が満を持して昨年舞台化。歌やダンスを盛り込んだ浮き立つように楽しい音楽劇が生まれた。ーーー魂をゆさぶる人情喜劇の幕が上がる‼︎

1931年。地中海の爽やかな風が吹き抜ける港町。ーーーセザール(柄本明)が経営するカフェは暇を持て余した男たちが集まるサロンだ。一人息子のマリウス(桐山照史)は船乗りになって海に出ることを夢見ている。幼馴染のファニー(瀧本美織)とは相思相愛なのになかなかお互いの思いを打ち明けられず周りの大人たちをやきもきさせていたが、ある夜遂に結ばれる。ーーーしかし幸せもつかの間、マリウスは船に乗るチャンスを掴み、ファニーは彼の夢を叶えるために身を引き、長い船旅に送り出してしまう。ーーーしかしその後、ファニーは妊娠したことを知る。もちろん父親はマリウスだーーー。

音楽劇マリウス フライヤーより)

 

以上の通り、マリウスがいかにして船乗りになるかという青春ドラマではなく、原作通り夢と愛と心の機微が物語の中心となる人情喜劇である。瀧本美織さんも仰っていたように(http://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2018-05/marius-takimotomiori.html)、人って理屈じゃなくて、かっこ悪くたってそれが人間、愛だよなという心を揺さぶられる脚本になっているようだ。もちろん私は1930年代のマルセイユ を生きてはいないが、いつの時代も人情というのは共通言語であるし、また舞台上から地中海の風と輝きを感じれるのではないかと今からとても楽しみである。

また背景として、女性が生きづらく、シングルマザーという概念すらも生まれていないような時代というのもあり、ただ自分の意思を貫いて一人で育てられるような環境ではないことからは、今の時代では起こらない情動もあるかもしれない。舞台を通して時代も感じれたらと思う。

 

「bar de la marine」の画像検索結果

セザールの経営するカフェのモデルとなった実在するお店(実際はバー)です。扉の中から陽気な声が聞こえてきそう

 

 

山田洋次監督

失礼ながら、私は「音楽劇マリウス」で初めて山田洋次監督作品と対面することになる。「男はつらいよ」シリーズはもちろん知っているし日本を代表とする映画監督であると認識しているが、作風やバックグラウンドなどは知らなかった。そのため色々情報を集めてみたが、実は、マルセイユ三部作は山田洋次監督をドラマの道に進ませた戯曲作品であるらしい。セザールは寅さん、ファニーがさくら、マリウスが博、といった風に愛すべきキャラクターと重ね合わせてそこから繰り広げられるのが寅さんの世界なのである。そんな原点とも言える、愛と思い入れの強い作品を、長いキャリアを積まれた今新しい作品として世に送り出されたことを考えると、さらにどんな劇なのか観てみたくなった。

また、山田洋次監督の作風として、芸術的な斬新なものではなく、極めてオーソドックスなものであるそうだ。ただそれがありきたりということでは一切なく、人間ってそうだよな、という知っていたけどというようなことが胸を強く打つことは想像できる。

山田洋次監督が舞台演劇の世界に入られたのは約10年前だそうで、70代の頃というから驚きである。先日のちちんぷいぷいのインタビューで、今の年齢だからこそ見出せた新境地があると仰っていた。「年齢を重ねたからこそ発想が自由になり、こんな映画も作りたい、あんな映画もあっていいんじゃないか」と考えるそう。私のような素人からは、長くやっているからこそ、これまでの作品や信念に縛られてしまうのではないかと容易に想像してしまうが、ここからまた自由に新しいものを創り出せることの素晴らしさが、マリウスにも反映されているのかなあと想像するとさらに楽しみが増してくる。

 

 

人情劇ということもあり、キャストが変われば空気が一新されるのはないかと思う。私は翼くんが演じたマリウスを拝見していないため、どういう新しい風が吹いたか見極めることは難しいかもしれないが、人の心の機微、愛と夢の複雑な絡み合いを描いた山田洋次監督作品を照史くんがどう受け止め、照史マリウスはどんな表情を見せてくれ、どんな魂の揺さぶりをしてくれるのかなと今からとてもワクワクしている。個人的な期待になるが、私は照史くんの目の演技がとても好きで昨年の出演舞台「アマデウス」ではそれが非常によく出ていたと感じた。演技は台詞回しやリアクションだけではないのだな、視線一つでこんなにも感情を伝えられるのかと感銘を受けたことをよく覚えている。今回運よくとても近い席を当てることができたので、「音楽劇 マリウス」でも自分の目でそれを感じられたらと思う。